この運命を奇跡と呼ぶならば。
「左之、静かにして。声が大きい。」
「お、おう。」
桜の静かな剣幕に圧されたのか永倉とは違いさっと静かになった原田は声を落として皆の顔を見渡しどういうことだ、ともう一度尋ねた。
「それを説明するのは土方を見つけてからね。左之、土方どこかわかるかしら?」
「あ、あぁ。土方さんなら道場に居たぜ。」
「そうなの。じゃあ、誰か…やっぱり私が行くわ。三人ともここで待ってて。」
そう言って道場の方に歩き出したが、数歩歩いてピタッと動きを止めると後ろを振り向き、静かにしててよ、と念を押して今度は止まることなく歩き出した。
遠ざかる桜の背中を見ながら不意に永倉が口を開いた。
「あいつも逞しくなったもんだよな。」
「まぁな、ここに来た頃はなんか、こう…ピンと気を張り詰めててよぉ、それでいて触ると脆くて今にも崩れ落ちていきそうだったよな。」