この運命を奇跡と呼ぶならば。
永倉は俯き絞り出すような声で桜に問いかける。そして、ゆっくり顔をあげ桜の肩を掴むと必死そうな表情で声をあげる。
「なぁ…?どうなんだよ?!なぁ、桜?!」
「おい、新八!どうしたんだよ?!」
目が合うと表情を固くし視線を外した桜に永倉は知らず知らずの内に肩を掴む手に力が入る。その様子を見ていた原田は桜から永倉を引き離し、今度は原田が永倉の肩を掴む。
「だってよ、あいつが自分の意思であの人について行ったんならあいつは…平助はどうなるんだよ?!」
「っ…!!」
永倉にそう言われると原田も気が付いたように目を開き桜を振り返る。
「平助は…自分の意思であの人について行ったのよ。」
「じゃあ、平助も…殺るのか?!」
「そんなこと!」
桜は永倉に即答を返した後俯くと、それまで黙っていた斎藤がぽつりと言った。
「なら」
「え?」
「なら、あいつも間者という事にすればいい。そうすれば、平助を殺る必要も無くなるだろう。」