この運命を奇跡と呼ぶならば。

「さ、さいとっ!…斎藤、っが…」


そして、変わらず斎藤は固まっている。


「ねぇ?一ったら!!」


「さ、さささささささく、桜。」



桜が大きな声で斎藤を呼ぶと漸く反応を示し、桜が一歩近くと一歩後ろへ下がり顔が少し引き攣っているように見える。


「どうして逃げるの?」


「に、逃げてなんて…」


「逃げてるじゃない、私、なにかしたかしら?」


「…み、未婚の男女が、しかも、女子の方から男に…」


「男に、なに?」

桜のスイッチは切れてはいなかった。むしろ、より一層悪化しているようである。


「く…くちづけなど…」


「いいじゃない、頬なんだから。それに、こんなの挨拶みたいなものよ。異国じゃ当たり前よ。」


「異国のことなどいいのだ!此処は日本だ。」

くちづけ、その言葉を口にしただけなのだが更に顔を赤くして声が絞んでいく。そして、開き直った桜に赤くなりながらも正論を返す。



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