この運命を奇跡と呼ぶならば。
それでも、伊東は桜に押され気味で酒に酔ってしまっていることと桜がただの剣の使い手でなはないことが不利な状況を作り出している要因の1つで桜の方が優勢な立ち位置にいた。
「桜、早くっ!早く殺れ!!」
「…わかってる!」
原田の焦りの声に桜は素早く返事をするとそこから一気に攻めたてる。元々桜が有利な状況だったのもあり、事は上手く運び伊東が小石に躓(ツマズ)き後ろに尻もちをついた。それと同時に伊東の手から刀が抜け丸腰の状態になる。
「…。」
そして、桜が無言で刀を振り上げ身動きの取れない伊東に向かって刀を振り下ろし、刀から伝わってくる確かな感触と音を感じると伊東の体から刀を抜き取る。それと同時に向こうからから駆けてくる数人の足音と伊東を呼ぶ声。だが、それももう遅い。伊東は桜の手によって呆気なく逝った後だ。
「伊東さん!」