この運命を奇跡と呼ぶならば。
必死に、尚且強引に手をかざして詞(コトバ)を唱えれば藤堂の傷は塞がっていく。
「桜…、俺さ、なにがしたかったんだろうな…。」
「お願い、まだ、まだ喋らないで。」
途切れ途切れに言葉を紡ぐ藤堂は固く目をつむり、その目からは涙を流す。嗚咽混じりの悔しそうに紡がれるその思いに桜は戸惑い、どう声をかけるべきかまよっているようで事務的な返事しか出来ない。
そしてしばらくすると藤堂の傷は塞がった。が、流れた分の血が戻るわけではなく藤堂の顔は青白いままだ。
「平助、立てる?」
「ちょっと、ふらふらするけど大丈夫だ。」
「ごめん、私のせいね…。」