この運命を奇跡と呼ぶならば。
「はぁ……桜!!」
「へっ?」
「へっ?じゃねえよ。総司はどうしたかって聞いてんだ。」
「あぁ、総司なら部屋で寝てるわ。」
土方に大きな声で名前を呼ばれ、肩を震わせびっくりしたように顔をあげる。
「お前、最近どうしたんだ。」
「それは…。」
油小路の時、未来へ一瞬かえったことを思い出し、口ごもる。そんな桜を見兼ねてか原田のフォローが入る。
「土方さん、いいじゃねぇか。…桜、いつでもいいから話したくなったら話せよ。」
「…仕方ないな。桜、無理はするなよ。」
「…ありがとう。」
ため息を吐きながらも納得した様子の土方に桜はほっとしたような、困ったような笑顔を浮かべて頷いた。
「そろそろ、部屋に戻るわ。」
「あ、それなら台所に置いてある総司の分の飯を持っていってくれ。」
「うん。持っていくわ。」
桜はそう言って立ちあがるとそのまま部屋を出て行ったあと、広間に残ったもの達はその後ろ姿を不安そうに見つめていた。
「桜、ほんと大丈夫なんだろうな。全く、あいつはすぐに無理する癖に一人で抱え込もうとしやがる。」
「そういや…あいつ、あの時様子が変だったんだよな。」
「どういう事だ、平助。」