この運命を奇跡と呼ぶならば。
藤堂がふっと何かを思い出したようにお椀に残った白米を口に入れながらもごもごと喋る。土方はそんな藤堂を叱る以前に呆れつつ、この際何でもいいと眼光鋭く尋ねる。
「えっと、なんつったらいいかわなんねぇんだけどよ。一瞬桜が消えたっていうか薄くなったとでも言うか…。そんな風に見えてさ、まぁ、一瞬だし気の所為かも知れねぇけどな。」
「……いや、充分だ。平助、他にも何かないか?」
「うーん………。」
藤堂は言葉通り首を捻って思い出そうとするが、その以上の事は思い出せないようでしばらく唸っていたが、諦めたようにさっぱり告げる。
「もうわかんねぇや。俺も必死だったし、ごめんな。役に立てなくてよ。」
「いいや、ありがとう。助かった。こっちこそ悪かったな。」
土方も無理に思い出させようとすることはなく、鋭かった眼光もいつの間にか柔らかくなっている。
ただ、その場に居る全員と当の本人である桜はあえて口には出さないが心のどこかで思った。
────きっと彼女が近いうち、未来へ帰る日が迫っていることを。