この運命を奇跡と呼ぶならば。
「総司?食べないの?」
「うん、食べれるかと思ったんだけど…。あんまり食べれそうにないや。」
「駄目よ、ちゃんと食べなきゃ。」
眉尻を下げて困ったような心配しているような顔をする桜に沖田は小さく頷くがやはり、手に持つ箸はなかなか進んではいない。
そして、そっと箸をおいて沖田は前々から考えていた事を切り出した。
「それより、桜ちゃん。…この部屋から出て行った方がいいよ。もう、これからは必要以上にこの部屋に入るのはやめるようにしないと。」
「…そ、れはどういう?」
「ずっと、思ってたんだ。いつも食事を持ってきたり着替えの服を持ってきたり。大変だろうし、何より……君にうつしてしまう。」
ぎゅっと胸の辺りを握りしめうつむく沖田の表情は桜からは見えない。だが、そんな沖田を桜は勢いよく抱き締めて言った。
「そんなこと、私はどうでもいい!」
「僕がっ、僕がよくない!」
「…っ。」
そして、その時ようやく見えた沖田の頬には涙が流れているのに気付く。抱きしめた腕を沖田がそっと振りほどいたが桜は腕をだらりと下げたまま沖田を見つめていた。
「…もし、君に……なにかあったら僕はどうしたらいい?僕が助けてあげられるのならいつだって助けてあげる!でもっ…もう僕は、こんな身体の僕は…君になにもしてあげられない…。なにかあったって助けてあげることも出来ない!…お願いだから、もう…。」
沖田の叫びに桜がなにも言えずにいると、スゥと息を整えた沖田が静かに告げる。
「…愛してるんだ。」