この運命を奇跡と呼ぶならば。
「桜、散ってきたな…もうすぐ5月か。」
桜は木の根元へ座った。
「ねぇ、私。土方に''まぁ、いい。''なんて言ったけど、良くなんかなかった。凄く怖い。この手を血で染めるなんて、未来では絶対に無いから。覚悟を決めたつもりだったけど、それはあくまでも"つもり"に過ぎなかったよ。この時代、殺さなければ殺される。そんなのはわかってる。でも、いざという時、私はこの手を血で赤く赤く染めてしまうのかな。」
最近は困ったり、辛い事があると此処に来る事が多くなっていた。
「ま、仕方ないか。私も早く、"女"から卒業しなきゃ。」
そう言って立ち上がると屯所へと帰り、部屋へ入ると沖田が居たので朝の文句と巡察の事を伝えると
「総司、朝はちゃんと起きろ。起こす側の私も大変でイライラする。それと今日の巡察には私もついて行く事になった。」
「僕、ちゃんと起きてるよ。それより…
人を殺すのが怖い?」
いきなり桜を見て真剣な顔で尋ねてきた。桜は、誤魔化そうかとも思ったが、真剣な沖田の表情に負けたのか素直になって話し始めた。
「…あぁ。怖いよ、とても。私は命の重みを知ってる。きっと、誰よりも。巡察では何が起こるか分からない。問題なんて起きなくて、普通に戻れるかもしれない。もし、問題が起きて刀を抜く事があるかも知れない。全ては"もし"の話だ。けれど、その"もし"が起こった時、私は刀の抜き、人を殺す事が出来無いと思う。わかってる、わかってるんだ。殺さなければ殺される。でも、私は人を殺す事が出来ない。殺すのなら、殺された方が良いのかも、なんて考えたりしても、私は殺される訳には行かない。
…誰よりも大事な人が待っているから。」