バッドエンドの終わり方
「お父さんなんて、帰ってこなきゃいいのに」
いつしかこの言葉が、父の仕事の帰りを家で待つあたしの口癖になっていた。
それからというものの、この街にいられる時間がとてつもなく短く感じられて、
とうとう、引越し前夜になった。
あたしは、自分の部屋で、最後の準備を進めていた。
引越しのための荷物はもう、全部業者のトラックに積んである。
殺風景になった自分の部屋で、あたしは一人、冷たいフローリングの上で天井をぼーっと見上げながら寝転がっていた。
あたしが次に住むところからこの街までの距離は到底すぐに行けるような距離じゃなくて、次はいつ帰って来れるかもわからない中、あたしの心は不安とお父さんへの怒りでいっぱいだった。
「入るぞ。」
不意になったドアのノック音と…父の声。
「うん」
あたしは返事をしたあとに、寝転がっていた体を起こした。