光 (ver.2005)

第10夜・高山碧吏(5)

12月16日

今日、溜まっていた仕事を一気に片付けた。
文筆業のいいところは、どこに居たって仕事が出来るところだ。
で、悪いところは、どこに居ても仕事から逃げられない点だ。
まあ、幸い私は仕事が苦にならない性質なので、そんなに思いつめたことはない。

今、隣の部屋に北島さんが来ている。
マユりんの家なんだから、彼氏がきて当然なんだけど。

私が仕事をしているので、気を使って奥の部屋に行ってもらっている。申し訳ない。

さっき、私がここに居候している理由をマユりんが一生懸命北島さんに話していた。
わかりにくい内容の話を、わかりにくい順番で、わかりにくく説明していた。
北島さんは一言「わかんね」と言った。

北島さんはものすごく男前だ。
でも、一年中半ズボンだ。
今日もダウンジャケットの下は小学生みたいな半ズボンだった。
どうしてそんな自分を貶めるような格好をするのか、一度だけ聞いてみたことがある。
人間の脚は、車のタイヤに相当する部分で、そんなところに布をかけてしまったら、事故の元になる、ということだ。

正直、こいつ馬鹿だと思った。

好きな食べ物は「エチケットライオン」。
…歯磨き粉じゃん。
彼の半ズボンのポケットには、常に歯磨き粉のチューブが入っている。

そして、暇さえあれば「おっぱいミサイル」のことを考えているらしい。
「おっぱいミサイル」とは何かについて、熱々と語ってくれたのだが、結局一から十までさっぱり分からなかった。
おっぱいが火を噴きながら敵に向かって飛んでいくのだろう。
そういう兵器なのだろう。
< 12 / 28 >

この作品をシェア

pagetop