光 (ver.2005)

第4夜・高山碧吏(2)

12月10日

今日は日がな一日仕事に追われていた。
今週末締め切りの原稿が思うように進まなかったからだ。
これを書いている今もなお、思うように進んでいない。
多分、私自身興味のない題材だからだろう。
大体さ、「スベスベマンジュウガニの名前の由来」なんてコラム、誰が読むの?
メディアミックス誌上で。
誰も読まないような原稿にどうして乗り気になれるだろうか。
ていうか、スベスベしてて、饅頭みたいな形してたからじゃないの?
知らねぇよ。
あーあ。逃げちゃおっかな。

一日中机に向かいっぱなしだから、体がギシギシする。
あ、タバコがない。
散歩がてらコンビニ行ってこよう。
と思ったら、あの男からメールがきた。クリスマスの予定とか聞いてきやがった。
「プレゼント何がいい?」だって。
「どうして電話に出てくれないの?」だって。
昨日、着拒にしたからもう電話はかかってこないけど、その分メールが増えた。

ウザ。

メールも拒否ってやろうかと思ったが、そうすると家まで押しかけられそうだ。
こいつちょっと頭がおかしいんじゃないだろうか。
ストーカーっぽい。
確かに思わせぶりな行動をとった私も悪いのだろうが、ここまで勘違いされるとは。

ま、あんな奴どうってことないから、しばらくは放っておこう。
いざとなったら、アキラとか岡野さんとかに頼んで、追い払ってもらおう。
何も私一人が頑張って、こんなどうでもいい奴に嫌われることはない。
せいぜい適当にあしらってやろう。

性格悪いな。私。
いや、でも、何を最優先に考えるかっていう思想の問題だからね。これは。
あの男は間違いなく私を最優先事項として生きているんだろうけど、私は自分を大事にしているだけ。
私は私が信じたものだけしか信用しない。
だって、他人に左右されたくなんかないから。
それじゃ生まれてきた意味なんかないと思うから。

何にも頼らず、自立すること。一人で完結した存在であること。
それが出来て初めて本当の自分でいられると思う。

ってなこと書いてたら、なんだか気持ちが大きくなってきた。
こんな原稿どうだっていいや。適当なこと書いてやれ。
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