相容れない二人の恋の行方は
 いきなりいなくなって帰ってきたと思ったら、また予想もしなかった決意とやらを告げられた。
 時々ふいにやってくる予想のはるか上を行く発言はいつものこと。呆気にとられるほど自分のよく知る新谷がそこにいる。
 今はなによりこの思いが強く邪魔をして、色んな思いがこみ上げてきて、溢れて、また泣きそうになった。
 こんな、一般人の私からしてみたらありとあらゆることが規格外の人だけど、私はそんな彼が好きなんだ。この気持ちはもう気付かないふりなんて出来ない。

「そういえば。真由子って泣き虫なんだな。……知らなかったよ」
「そ、そんなこと」
「ボクの命令や指示には泣きごとなんてめったに言わずいつだってついてきたのに」
「それとこれとは……」
「寂しかったんだ。可愛いじゃん」

 人一人分の距離を開けて目を合わせる。意地悪してからかうような顔をして言っているかと思ったら予想に反して優しい笑みを口元に浮かべていた。涙を耐えながら心の奥底で小さく胸が高鳴り出す。

「今回のことは本当にごめん。そこまで不安にさせているとは思いもしなかった。二度と、黙っていなくなるようなことはしないよ」
「はい」
「真由子もだよ」
「はい……!」

 やっと、小さく微笑むことが出来た。
 新谷は身体をこちらに向け窓ガラスに斜めに身体を預けるようにもたれかかると、外の景色に目を向けながら言った。私も再び視線を外へと向ける。

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