物語られない私の物語





目を閉じたまま、足音に耳を澄ます。


とん


とん


とん


足音は、一歩、また一歩と私に近付いてくるようだ。



「誰・・・?」



顔を上げると、隣の席の吉澤くんが、自分の机の前で立ち止まっていた。

私の反応に戸惑いながらも、忘れ物、とノートを掲げてみせる。


なるほど。


恥ずかしいことをした。



「ごめんね」



軽く頭を下げると、案の定、目が赤いことを指摘されてしまった。



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