物語られない私の物語




彼は私に何かを聞くわけでもなく、何かを言ってくるわけでもない。


ただ、空気みたいに黙ってそこにいて、私に話しやすい雰囲気を作ってくれる。


不思議な、人。


長いこと隣の席だったのに、知らなかった。



「好きな人に彼女ができて初めて、自分の気持ちに気付くなんて、馬鹿だよね・・・」


「そうやって、あんまり自分を傷付けるようなこと、考えないほうがいいよ。ただでさえ安藤さん、傷付いてるんだから。」


「・・・・え?」


「安藤さんは馬鹿じゃない。好きな人と過ごす幸せな時間が、当たり前すぎただけだ、と思う。」




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