Sunshine Door
トイレの扉が開き、悩ましげな面持ちでユウトが戻ってくる。


「サヤカ、ちょっと大切な話があるんだけど良い?」

「すみません お会計お願いします。」


「話したいことあるんだけど?」

「あとでね」


お店を出る時に「今日はご馳走様。それとありがとうございます。また来ますね」とマスターに告げる。


マスターの方は何事もなかったかのように普段と同じ無口のまま言葉を返すようなことはなかった。


そんなマスターとは対照的に不思議そうに顔を覗き込むユウトの横顔が私はさらに愛おしく思えた。


ライムライトから外に出ると澄んだ空気が心地よく、始発を待ち望んでいた恋人たちやサラリーマン達で街が溢れていた。



「サヤカ、さっきの続き。大事な話があるんだけど少し時間あるかな?」

「私も大切な話がある。」

「なに?」

「私、お見合いやっぱりやめたんだ。」

「え?! 何で急に?」

「さっき、と言うか今決めたの。 それよりユウトの大事な話、もう少し後でもいい?」

「それは別に良いけど どうしたの?」

「まぁ良いじゃん 気にしないで。」



街のネオンはすでに消え、冷たい空気を感じながら私とユウトは普段と同じように楽しく会話を重ねながら駅へと向かった。




「ねぇユウト、いい天気だね」

「なに言ってるの? 曇ってるじゃん。」

「いいの こうして会話してるだけでも楽しいじゃん」

「なにそれ? 全然意味わかんねぇよ。」

「ねぇユウト、朝ごはん食べに行こうよ?」



曇の隙間から漏れる朝焼けの日差しを浴びながらの少し甘いハニートーストと少し熱めのミルクティー。



私の嘘は今日で最期。


無駄にして来たたくさんの時間を二人で取り戻さなくてはならない。



「ねぇユウト?」

「なに?」

「ううん。なんでもない」



「ねぇユウト?」

「だからなんだってば?」

「だから何でもないってば」



~Sunshine Door~
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