青い嘘とブルーなKISS

別れ際「またね」と言ったセナの表情が不機嫌なのか不機嫌じゃないのかわからなかったが、彼の眼差しが悲しそうであったのだけはなんとなく読み取れた。


電車に乗りこみ、一人になると我慢していたかのように大粒の涙が溢れ出した。


イジメから逃げ、嘘を重ねては、やっと好きになれそうな相手と出会えても、心のナイフで傷つけて突き放す馬鹿な女性なのだと思うと涙が止まらなかった。



でもそれは羽化したばかりの醜い蝶が飛び立つ方向を間違えただけ。


地面に向かって羽ばたき、ふと自分の抜け殻に振り返った時、「これはやっぱり正しくない」と後悔だけが残るような感覚。




地面と衝突する１秒前



気づくのが遅かったわけではなく、羽ばたく方向が空ではなく地面であっただけ。


両の羽が削ぎ落ち、地面に横たわりながらも、誰かが電車に置き忘れた１本の傘が視界に入った時、私は声を押し殺してもう一度泣いた。



自宅の最寄駅に着くころには、涙もカラカラに乾き、駅から自宅まで一人で歩いていると眩しい青空がほんの少しだけ心の溝を埋めてくれるような気がした。