罪線〜an imitation〜
柴田に連れ戻され、自分が元々居た部屋に戻ると、俺は自分の頭を整理し始めた。

……今までの俺は、一体何だったのだろうか?

ここに来る前なら、自分の利益だけを考え、他人が俺に向ける感情など、一切考えもしなかった筈。

それが、柴田の一言……たったの一言で、本来なら踏み込もうともしなかったであろう、ミカの元へと向かおうとしてしまった。


……俺は弱くなってしまったのか?


……俺は脆くなってしまったのか?

あくまでも冷静に居ようとする俺の左脳。

が、計算では抗えない程の強い作用が右脳で働く。


「悪くはないな……」


弱くなったんじゃない。
脆くなったんじゃない。


俺の心臓は、確かに温かい鼓動を刻んでいる。



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