罪線〜an imitation〜
「それで、さっきの歌は何て歌?」


「歌の名前は解らない。お兄ちゃんが教えてくれた歌だから」


俺から言えば、全く素性の解らないシュウジの兄だが、あれだけ優しいメロディーを作るのだ。

人もそうであるに違いないと素直に思える。


「お兄さんと仲良しなんだね」


「うん!……でも……」


その後、シュウジの口からは言葉が詰まって出て来なかった。

それもそのはず。

仲の良かった兄だったが、ここに連れて来られたという事は、その兄と会えなくなるかも知れないという事。

やはりその悲しさは、シュウジの小さな身体には重過ぎるのだ。


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