罪線〜an imitation〜
玄関が開くと共に、何かが投げ入れられる音が聞こえた。


「ケンジお兄ちゃん……何の音?」


「……ちょっと見てくる」


恐怖に怯えるシュウジを尻目に、俺は階段を降りた。

正直言えば、俺だって怖い。降りた所で平岡に見つかってしまったら、何をされるか解ったものではない。

しかし、それを見せては、シュウジの恐怖心を煽ってしまう。

平然な顔をしてはいるが、心中、気が気ではない。

足は震え、掌には、じっとりと汗をかいている。

今、この場所からでは人の気配を感じ取る事が出来ないが、本当に誰もいないのだろうか。

俺はゆっくりと辺りを見渡した……。


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