罪線〜an imitation〜

支配の歌声

封筒の中、透明なビニール袋に入っていた"それ"は真っ赤に染められ、まだ微かに体温を帯びていた。

以前はこんな光景に憧れさえ持っていた自分が、恥ずかしくて、悔しくて、嫌になる。


「……柴田」


指だ。左手の薬指。

前に聞いていた彼女。それと誓いを立てたであろう指輪が、悲しそうに赤で染められている。


……何故こんな事になってしまったのか。

……何故こんな事をするのか。

……何故俺は此処に来てしまったのか。

その全てが渦を巻き、心が荒れ、気が振れそうになる。

……が、俺がこんな風になっている場合ではないらしい。



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