罪線〜an imitation〜
視線を感じる。

自分が来た階段の上、シュウジが怯えながら、こちらを凝視している。


「……ケンジお兄ちゃん……」


必死に発した声を聞き、俺は階段を駆け上がる。

シュウジの前に立ち、何とか励まそうとするが、なかなか言葉が出て来ない。


「俺が守る」


自身がない俺に、こんな気休めは言えない。


「大丈夫。絶対大丈夫」


これも根拠がなく、声にはならない。


では、どうすればいい?

今まで無機質に、淡白に過ごして来た人生。大きな後悔が、波の様に押し寄せてくる。

何と無力な事か。


< 120 / 161 >

この作品をシェア

pagetop