罪線〜an imitation〜
自分の名前を"シュウジ"と名乗った少年を前に、何とも言えない寒気が走った。


「コウタ。何でケンジ君にシュウジと名乗ったんだい?」


「この間、シュウジって人壊しちゃったでしょ?だから、ケンジお兄ちゃん、寂しいんじゃないかなぁと思って」


「そうか。優しいんだね、コウタは」


二人のやりとり、こんな子供に遊ばれていた事実に、腹が立ち、吐き気を催し、涙が出そうになる。


もう、何もいらない。

もう、傷付きたくない。

もう、ここを出たい。


「シュ……コウタ。もう大丈夫だ。ちゃんと勝負するから、俺から離れていいよ」


するとコウタは、俺から溢れる諦めの表情を読んだのか、素直に離れた。

……帰るんだ。

もう、ミカの事を考えてる余裕はない。

勝って、俺だけでも帰るんだ。

元来、俺はそういう人間。

人の心配が出来る程、優しい人間ではないのだ。


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