罪線〜an imitation〜

己が為

平岡が変圧機にコンセントを差し、電源が入る。俺が女性キャラ、平岡がゴツいキャラを選ぶと、運命を大きく左右するであろうゲームが始まった。

俺がいつもの様にキャラを左右させ、相手を挑発していると、台越しに平岡の呟きが聞こえる。


「……変わってない……嬉しいな。三年前の、あの日が蘇ったんだ……」


まるで夢でも見ているかの様な平岡の声。その対象になっているのは、この俺だ。

俺は偶像物ではない。しがない、一介の高校生とゲームをしているだけで、感動出来る平岡が、羨ましくも、バカバカしい。


「随分と余裕だな」


奴には、そんな余裕はないはずだ。

俺が繰り出す攻撃により、平岡のキャラは、段々と体力を奪われて行く。


……段々、段々と。


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