罪線〜an imitation〜
「入っておいでよ」


平岡は、ドアの外にいるであろう"誰か"に声を掛けた。

一体誰が居ると言うのか。……そう言えば、いつの間にかコウタの姿が無くなっている。

平岡の声を聞いて反応したのか、部屋のドアが軋みながら開く。


「お兄ちゃん、これでいいの?」


コウタだ。コウタがミカを連れて入って来た。


「あぁ、良く出来たね。いい子だ」


平岡の生臭い様な褒め台詞。しかし"いい子"と呼ばれる人間が出来る事ではない。

ミカに被せられていた白い布は剥がされていたが、憔悴しきった顔に、猿轡が装着されている。

拘束された手は、後ろ手に取られ、背中には刃物が突き付けられている。

……今更ではあるが、これが現実とは思えない。

人間のやる事とは思えない。

人間じゃない。


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