罪線〜an imitation〜
俺はキャラクターを操作するスティックを……止めた。


「……ケンジ君、何をしているんだい?そんな事では生きて帰れないよ?」


そんな事は百も承知だ。が、俺に託された、ミカの命を左右するスイッチ。それを押す事は出来ない。

それが俺の答えだった。


「何か、奸計でもあるのかい?」


そんなものは何もない。平岡、アンタには解る由もないだろう。

俺の中に生まれた、温い感情。それが俺の人生を、根底から否定してしまったのだ。

ここに来る前では想像もし得なかった事だが、この気持ちを育んだのは、皮肉にも平岡。

奴は自らの手で、この勝負に水を差してしまったのだ。


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