罪線〜an imitation〜
柴田だった。俺が勝手に死んだと決めつけていたその男は、誰も気付かないうちに、少し開いていたドアから入り込み、コウタからナイフを奪っていた。


……勿論、身体はボロボロではあったが。


「何するんだよ!返せよ!」


コウタがナイフを奪い返そうとしている。しかし、身体はボロボロでも大人対子供。

柴田はコウタの腕を掴み上げ、ドアの外に放り投げると、そのまま鍵を閉めた。

形勢逆転である。


「ケンジ!」


拘束具を外されたミカが、大きな声で俺を呼ぶ。

俺はそれに対して、感謝の念、謝罪の念を込めた笑顔を見せる事しか出来なかったが、ミカはひどく驚き、その後笑顔を見せた。

事態は一段落を迎えた様にみえたが、それはまだ先の事。


「柴田ぁ、余計な事してくれたねぇ……」


問題は、これからだ。


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