罪線〜an imitation〜
試合開始の合図が鳴ると、平岡は珍しく、脇目も振らずに飛び込んで来た。

いつもはある程度様子を伺ってから前に出るのが平岡の癖だが、これが正真正銘最期の闘いという事も相俟って、余裕や理性を失っているのだろう。

これを普段俺は、笑い飛ばすかの様に弾き返すのだが、今日の俺は平岡以上に余裕がない。

もちろん、これは手を抜いての事ではない。ただただ全力でプレイをしているのだが、"あるモノ"を変える事によって、平岡と俺の実力差を埋める事になるのだ。

ほら……全力で戦っているのに、俺のキャラだけ体力が減って行く。

全力で戦っているのに、俺は平岡に勝てない。


「くそ……負けか!」


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