罪線〜an imitation〜
「俺の事、知ってるのか?アンタ……誰だ?」


「あぁ、紹介が遅れたね。ボクは平岡。キミの事は深く知っているわけじゃない。知っているのは名前と、ゲームが強いって事だけだよ」


不思議と心を許してしまう。そんな中にあっても、その言葉だけは半信半疑だった。


「嘘をつけよ。アンタの目、俺の全てを知っていそうな目だ」


すると平岡は、フフッと含み笑いを浮かべながら言った。


「まぁ、そんな事はどうでもいいじゃないか。僕がキミの事を深く知っていたとして、それが二人の関係を大きく左右するとでも?」


軽くカマを掛けてみたが、平岡の言う事に間違いはない。

奴が俺を知っている事自体は、さほど大した事ではない。重要なのは、今日"偶発的に出会った"という事実。それだけだ。


「……そうだな」


またしても同調。それが嫌ではない。


そうか……俺がこの男に心を開いた理由。


俺と平岡は、温度が似ている。


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