罪線〜an imitation〜
やはり不思議な男だ……。

平岡に出会ってから、安心一色でもなければ、不安一色でもない。

これが俗に言う、一番不安定で、最も危険な状態なのだろうが、それが妙に心地良い。

と、考えてるそばからまたしても覗かせる"不安"の表情。


「ケンジ君。キミ、この人殺せる?」


……?!


「殺す……というと?」


「読んで字の如くだよ。この人間の物語を終わらせるんだ。出来るかい?」


平岡が言った様に、俺もまたこの男の事を嫌いではない。

が、流石にそれには抵抗があった。


「……出来ない」


「フフ……そうだと思った」


不敵な笑みを浮かべる平岡。間違いなく、俺の事を弄んでいる。


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