罪線〜an imitation〜
「ケンジ君。キミはまだ、ルールやら、モラルという物に縛られているんだよ」


当然の事だ。ルールやモラルの問題以前に、命が消えた"それ"を見る自信がない。


そんな俺の心を読んだかの様に、平岡がこう切り出す。


「キミは何故、人が人を殺せないか、解るかい?」


「いや、漠然としか解らない……」


「そうか。実はルールとかモラルは関係ないんだ。"罪"という言葉そのものにある」


まただ……また、この男の哲学は、俺より先を行く。


「よく考えてごらんよ。楽して金が欲しい……好きな女を自分だけの物にしたい……嫌いな奴を殴ってやりたい。これ、どんな人間の思考だと思う?」


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