罪線〜an imitation〜
俺は生まれて初めて戸惑いという物を感じている。

しかし、そんな事を考える猶予は与えられていない。

さっきの、


「殺さないと言ったら?」


という問いに対する平岡の答え、"気分次第"というのは、俺の想像し得る限り、最悪の結果を意味するだろう。

やるしかないのか……。


「戸惑っている様だね。しょうがないなぁ」


という平岡の言葉にすら身体がビクンと反応する。

何を恐れているんだ。

この空間こそ俺の理想としていた場所ではないか。


「ケンジ君。キミ、人を殴った事はあるかい?」


今度は何だ?


「……いや、ない」


「そっか。じゃ、一つ選択肢を増やしてあげるよ」


何を言い出すのだろう……。


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