罪線〜an imitation〜

触れた線

――俺は……


とうとう踏み出してしまった。

程度で言えば、大したことはないだろう。

しかし、これは第一歩に過ぎない。

ジンジン響く俺の右手。狭い背中にのしかかる、大きな罪。


「ケンジ君。僕は言ったよ?絶対後悔するって」


「……いや、後悔は無いよ。俺が下に向かっていたら、俺は心の中に、もっと大きな傷を追っただろう」


「そうかなぁ……じゃあ、一つだけ許してあげよう。下のアレに掛けられた、白い布を除けてごらん。僕の言葉の意味が解るよ」


平岡が放った言葉の意味……俺は疑問を抱えながら下に向かって歩を進めて行った。


< 65 / 161 >

この作品をシェア

pagetop