罪線〜an imitation〜
人の命を絶つ。平岡はそれを望んでいた筈なのに、その直前で留まろうとしてる俺を見て、笑っていた。


「……どういう事だ……」


そう考える事はいくらでも出来る。が、俺の指先に力を込めねば、結果は近付いて来ない。

俺は迷いを払拭する様に、真っ白なヴェールを剥いだ。


……


…………


ドクン……ドクン……


常日頃、存在を主張して来ない心臓という身体の一部。


ドクッドクッドクッ……


それが、自分の存在を知らしめる様に、激しく脈打つ。


ドクドクドクドク……


「何で……何でお前が……」


そこには息絶えた一人の男が佇んでいた。


どおりで見付からない筈だ……


「……シュウジ……」


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