罪線〜an imitation〜
ミシ……ミシ……

柴田が近付く度に、床が鳴く。

ミシ……ミシ……

どんなお仕置きが待っているのか。そう思い、歯を食い縛る。

が、柴田は意外にもこんな事を口にした。


「……心配すんな。今、平岡は居ねぇ」


何を言っているんだ?

勿論、平岡は恐い。が、柴田も恐怖の対象だ。

平岡が居ないからと言って、心配が拭いきれる筈がない。


「ア、アンタだって平岡の仲間だろ。現に俺をこんな目に合わせたじゃないか」


すると柴田は、俺が被っていた白い布を脱がせ、俺の目を見た。


「悪かったな。でも、俺だって自分から望んでここに居る訳じゃない」


どういう事だろう。俺を殴り続けていた時のあの目は、紛れも無く本物。

ここ以外では生きていけない様な人間の目だった。


……が、今ここに立っている柴田の目も本物。

その奥には、何らかの憂いを感じる。


「ケンジ……聞いてくれるか?」


何を……話し出すのだろう……。


−−


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