罪線〜an imitation〜
「柴田さん……会いたかった」


女ってのは可愛いもんだな。恥ずかしげもなく、そんな事を言ってきやがる。


「おう」


返事にはなってないんだろうな。元々恋愛事には疎い俺だ。それ以上の言葉を言うでもなく、チヒロの手を引いた。

……楽しかったよ。

恋愛ってのは人間を変えちまうと言うが、この俺が、こうも変わってしまうとは思わなかった。

もちろん、パチンコ屋以外で会う事はまず無かったが、それで良かった。

……こうして顔を見れるだけで。

……こうして触れているだけで。

……こうして声を聞いているだけで、毎日が満ち足りている様に感じた。


< 97 / 161 >

この作品をシェア

pagetop