両親へのプレゼント
出会い
あの話は、今から13年前の7月中旬にさかのぼる。
夕方近くに、見た目、高校生らしき女の子が少し不安そうな顔をしてフロントのほう へ向かってきた。
最初、私は彼女がどこかの修学旅行生の一人かと思ったのだ。
しかし、実際はそうではなかった。
「フロントの責任者の方にお会いしたいのですが....」
と、その女の子が私に言った。
その日、宿泊の責任者である松浜課長が休みであったため、
「私が今の責任者ですが、私でよろしければお伺いしましょうか?」
と言って、フロントカウンターの近くにあるインフォメーションデスクへ彼女を案内 し、椅子に座ってもらった。
私も彼女の前に座ることにした。 彼女は少し沈黙があり、
「今度、両親をこちらのホテルへ宿泊をさせてあげたいのですが、どのようにすれば いいのか分からなかったので、直接ここへ来ました」
と彼女が言った。
「あなたのご住所はどちらで、今日は何でいらっしゃたのですか?」と私が尋ねた。
その理由は、彼女が未成年だと確信したことと、何か不可思議に私自身が感じたから だった。
「家は彦根(滋賀県)で両親と三人で住んでいます。ここまではJRと地下鉄で来ま した」と、彼女は正直に話してくれた。
「でも、彦根からわざわざそのために来られたのですか?」
と私が驚いた様子で聞くと、
「いえ、実は叔母の家が京都にあり、今日はそちらに泊まるのです。夏休み期間中 で、そのことは当然、両親も知っています」
「ご両親のためにそのようなプレゼントをするなんて感心しますね」
と私が言った。
つづく
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