奇跡の花『miraculous flower』―正直僕は強くない。けど、僕達は強い。
新覇はベッドで小一時間眠った後、食堂にご飯を食べに行った。すると、一人で食べているとよく知っている声の人物が声をかけてきた。
「ひさしぶり。隣良いか?」
「あかん。そこには先約しとるやつがおんねん」
「それだったら、先約している人には悪いけど、どいてもらおうかな。まぁ、来たらだけど」
「今まで、剣翔は何処にいっとったん?」
「それは秘密だな」
「あっそ、それなら別に深くはきかへんよ。せやけど、昨日帰ってくると思っとったのに、門限すぎてもかえってこんし、なんの連絡もないから、ちょっと心配やったんやぞ」
「すまん、すまん。心配してくれてありがとな。そんな我が相棒にプレゼントだ」
「なんや」
「じゃあ~ん。ネックレスで~す」
「なんかえらい高そうやけど、ほんまにもろうてええんか?」
「ええんや、ええんや。こないだの埋め合わせやん」
「おう、ほな、ありがたく頂戴するわ。けど、そのエセ関西弁はやめてぇな」
「わかっている。ちょっとからかっただけ」
「そないなことこっちもわかっとるっちゅうねん。今日は寮で泊まんのか」
「いや、今から実家に帰るわ」
「そうか。まぁ、帰れるときに帰った方がええからな」
「なんだぁ?お前俺がいないとさみしいんか?」
「アホか、変な言い方すんなや。まぁ、正直ちょっとはさみしいよな」
「ははは、お前正直やな。んで、お前今日いいことあった感じで顔若干にやけているけど、顔色なんか悪いな」
「よく、見抜いたな。せやねん、聞いてくれよ。僕今日ついに、梅春さんから一本奪えてん」
「まじか!?通りでにやついているわけやな。で、どうやったんや。やっぱり、気持ち良かったのか?」
「いや、決めた瞬間はもう放心状態で正直なんもわからんかったわ。でも、徐々に実感できてきて、決めた感覚を思いだすとめちゃ気持ちよくなったわ」
「まぁ、決めた瞬間男やったら、誰だって賢者タイムになるもんな。それは仕方ない」
「剣翔お前なんか勘違いしとらんか?僕が言うてたんは剣道の話やで」
「なんや、そっちか。俺はお前がついにあの梅姫様と一発決めたんかとおもったわ」
「相変わらずの思考回路で安心したわ。まぁ、勝てたんは良かったんやけど、なんかその後から体調悪なってもうてん」
「それはもうしかたないやろ。たぶん試合のしすぎやろ。それに、たった一回とはいえ、あの梅春彩華から一本とっただけの集中力使ったってことなんやから、そりゃあ体にも支障をきたすやろう。まぁ、どうしても気になるなら、担当医に連絡したらええしな。ほな、バスと電車の時間あるからそろそろ行くわ。じゃあ、明後日の交流戦でな」
「おう、バイバイ」
部屋に帰るとメールが3件入ってあり、2件はさっきの2人からの大丈夫かメールで、残り一つは王生先輩からで、内容は明日の集合時間と場所である。しかも、服装は制服に指定されていた。一応、了解のメールを返信して、残りの2人にも心配いらないと返事をして、就寝時間前まで、音楽を聴きながら、ゴールデンウィークの課題を進めた。そして、新覇にとっての人生の転換期ともいえる5月1日がやってきた。