氷の魔女と人魚の宝珠
揺れる海藻の街路樹の陰に隠れて、水底に降り立つ。
不意に気配を感じて振り返ると…
おとなしそうな顔の人魚の少年が、海底に直立し、目を丸くしてスリサズを見ていた。
「天使さま…
天空の騎士さま…?」
少年人魚の目には、スリサズが空から舞い降りてきたように見えたのだ。
(しまった!)
戸惑うスリサズに、少年人魚がすがりつく。
「天使さま、助けてください!
ぼく、何だか…
この町がヘンに思えて仕方ないんです!
何がおかしいのかわからないけど、何もかもがおかしくて…
自分が自分じゃないみたいで…」
ヘルメットに仕込んだ集音の魔石が、変声期前の少年の声を拾い上げる。
海中でも、少年が泣いているのはわかった。
「キミ、もしかして…」
拡声の魔石がヘルメット内のスリサズの声を海中に送り出す。
泡がブクブクいうのが邪魔だが、呼吸の魔石は買えなかったので仕方ない。
「天使さま!
ぼくは頭がヘンになってしまったのでしょうか?
毎日妙に息苦しいんです!
ぼくは病気なのでしょうか!?」
「ううん、そんなことないわよ!」
スリサズは少年の両肩を掴んだ。
人魚と人間では年の取り方が異なるので、実際の年齢はスリサズよりも上かもしれないが、その顔は人間でいえば十二、三歳の子供に見える。
スリサズは、お姉さんとして、この子を落ち着かせてあげたいと思った。
「キミ、名前は?」
「ロッコです」
「ロッコ、聴いて。
キミは本当は人魚なの」
「え…?」
「キミは人魚なの。
それにここは海の中なのよ」
ゴボ………ッ!!
突然、ロッコが苦しみ出した。
「ロッコ!
エラで呼吸して!
キミは人魚なの!」
ゴボゴボガボ…
「ロッコ!!」
人魚は肺とエラの両方で呼吸できる。
ついさっきまでロッコは無意識でエラ呼吸をしていた。
しかし幻術が中途半端に解けた今、少年人魚は肺だけで呼吸をしようとしている。
「クッ!!」
スリサズは潜水服の重りを外し、ロッコを抱き抱えた。
すぐにでも海上に出て呼吸をさせてやりたいところだけれど、急な上昇による急激な水圧の変化は体に減圧症をもたらし、脳や内臓にダメージを与え、後遺症も残りうる。
不意に気配を感じて振り返ると…
おとなしそうな顔の人魚の少年が、海底に直立し、目を丸くしてスリサズを見ていた。
「天使さま…
天空の騎士さま…?」
少年人魚の目には、スリサズが空から舞い降りてきたように見えたのだ。
(しまった!)
戸惑うスリサズに、少年人魚がすがりつく。
「天使さま、助けてください!
ぼく、何だか…
この町がヘンに思えて仕方ないんです!
何がおかしいのかわからないけど、何もかもがおかしくて…
自分が自分じゃないみたいで…」
ヘルメットに仕込んだ集音の魔石が、変声期前の少年の声を拾い上げる。
海中でも、少年が泣いているのはわかった。
「キミ、もしかして…」
拡声の魔石がヘルメット内のスリサズの声を海中に送り出す。
泡がブクブクいうのが邪魔だが、呼吸の魔石は買えなかったので仕方ない。
「天使さま!
ぼくは頭がヘンになってしまったのでしょうか?
毎日妙に息苦しいんです!
ぼくは病気なのでしょうか!?」
「ううん、そんなことないわよ!」
スリサズは少年の両肩を掴んだ。
人魚と人間では年の取り方が異なるので、実際の年齢はスリサズよりも上かもしれないが、その顔は人間でいえば十二、三歳の子供に見える。
スリサズは、お姉さんとして、この子を落ち着かせてあげたいと思った。
「キミ、名前は?」
「ロッコです」
「ロッコ、聴いて。
キミは本当は人魚なの」
「え…?」
「キミは人魚なの。
それにここは海の中なのよ」
ゴボ………ッ!!
突然、ロッコが苦しみ出した。
「ロッコ!
エラで呼吸して!
キミは人魚なの!」
ゴボゴボガボ…
「ロッコ!!」
人魚は肺とエラの両方で呼吸できる。
ついさっきまでロッコは無意識でエラ呼吸をしていた。
しかし幻術が中途半端に解けた今、少年人魚は肺だけで呼吸をしようとしている。
「クッ!!」
スリサズは潜水服の重りを外し、ロッコを抱き抱えた。
すぐにでも海上に出て呼吸をさせてやりたいところだけれど、急な上昇による急激な水圧の変化は体に減圧症をもたらし、脳や内臓にダメージを与え、後遺症も残りうる。