氷の魔女と人魚の宝珠
スリサズは焦る気持ちをグッと抑えてヘルメットからホースを外し、ロッコの口元に持っていって酸素を吸わせようとしたが…
バシッ!
ロッコが暴れ、それがあることに本人が気づいてさえいない尾びれによって、ホースが弾き飛ばされてしまった。
「!」
砂が舞い上がり、ホースから溢れ出る泡が掻き回されて、上も下もわからなくなる。
(落ち着けあたし!
ここでパニックになったら二人とも死ぬ!
ホースはどこ!?)
バシッ!
ロッコのひれが、今度はスリサズの腹に入り、スリサズは意識を失った。
気がつくとスリサズは筏の上で寝かされて、その顔をビレオが覗き込んでいた。
「ロッコは?」
スリサズの問いに、ビレオは静かに首を横に振って。
スリサズの目から涙がこぼれた。
こんなつもりではなかった。
スリサズはただ、本当のことをロッコに伝えただけだ。
自分の軽率さを呪った。
「これ以上の犠牲は出せん。脅迫者に従おう…」
苦々しくうめくビレオに、スリサズは黙ってうなずくしかできなかった。
もっと強い魔法使いを探して連れてこられれば、脅迫者の幻術を安全に破れるのかもしれないが、それでは脅迫者が指定した取り引きの時刻に間に合わない。
流れ者の何でも屋であるスリサズにこの仕事が回ってきたのは、ビレオが出先で脅迫状を受け取った時、たまたま同じ町に居たから。
(もともとあたしの手に負えるような事件じゃなかったんだ…)
スリサズは筏の隅に横たえられたロッコの亡骸を見つめた。
「スリサズ殿…
わしの家へ行って、金庫の中の宝珠を取ってきておくれ」
「あたしが…ですか?」
「わしの姿を妻に見られたくないのでな」
ロッコと同じことになるかもしれない。
「わかりました。
では、金庫の鍵は?」
「お前さんの魔法で壊してくれ」
「それじゃ宝珠も割れちゃうんじゃ…」
「宝珠は丈夫じゃ。
心配いらん。
派手にやってくれ」
「でも…」
「頼む。
全て終わって家に帰った時に、きれいな金庫を見たくないんじゃ」
嘘だな、と、スリサズは感じた。
ビレオはスリサズに気を遣って言っているのだ。
ここでスリサズに何か魔法使いらしい仕事をさせないと、スリサズがこの場所にきて出た結果が、ロッコを死なせたことだけになってしまうから。
スリサズは重い気持ちを抱え、三度海底に潜っていった。
バシッ!
ロッコが暴れ、それがあることに本人が気づいてさえいない尾びれによって、ホースが弾き飛ばされてしまった。
「!」
砂が舞い上がり、ホースから溢れ出る泡が掻き回されて、上も下もわからなくなる。
(落ち着けあたし!
ここでパニックになったら二人とも死ぬ!
ホースはどこ!?)
バシッ!
ロッコのひれが、今度はスリサズの腹に入り、スリサズは意識を失った。
気がつくとスリサズは筏の上で寝かされて、その顔をビレオが覗き込んでいた。
「ロッコは?」
スリサズの問いに、ビレオは静かに首を横に振って。
スリサズの目から涙がこぼれた。
こんなつもりではなかった。
スリサズはただ、本当のことをロッコに伝えただけだ。
自分の軽率さを呪った。
「これ以上の犠牲は出せん。脅迫者に従おう…」
苦々しくうめくビレオに、スリサズは黙ってうなずくしかできなかった。
もっと強い魔法使いを探して連れてこられれば、脅迫者の幻術を安全に破れるのかもしれないが、それでは脅迫者が指定した取り引きの時刻に間に合わない。
流れ者の何でも屋であるスリサズにこの仕事が回ってきたのは、ビレオが出先で脅迫状を受け取った時、たまたま同じ町に居たから。
(もともとあたしの手に負えるような事件じゃなかったんだ…)
スリサズは筏の隅に横たえられたロッコの亡骸を見つめた。
「スリサズ殿…
わしの家へ行って、金庫の中の宝珠を取ってきておくれ」
「あたしが…ですか?」
「わしの姿を妻に見られたくないのでな」
ロッコと同じことになるかもしれない。
「わかりました。
では、金庫の鍵は?」
「お前さんの魔法で壊してくれ」
「それじゃ宝珠も割れちゃうんじゃ…」
「宝珠は丈夫じゃ。
心配いらん。
派手にやってくれ」
「でも…」
「頼む。
全て終わって家に帰った時に、きれいな金庫を見たくないんじゃ」
嘘だな、と、スリサズは感じた。
ビレオはスリサズに気を遣って言っているのだ。
ここでスリサズに何か魔法使いらしい仕事をさせないと、スリサズがこの場所にきて出た結果が、ロッコを死なせたことだけになってしまうから。
スリサズは重い気持ちを抱え、三度海底に潜っていった。