氷の魔女と人魚の宝珠
ビレオ町長の屋敷は、他の巻き貝の家々よりも良く育った貝で作られている。
それは確かに立派ではあるが、同じ種類の貝が成長できる範囲内なので、人間の権力者の屋敷のように貧富の差を露骨に見せつけることはせず…
けれど厳かな力強さをたたえていた。
その玄関のドアの前で、スリサズはサザエの殻の呼び鈴に伸ばしかけた手を止めた。
(奥さんに何て言ったら入れてもらえるかな?
こっそり忍び込んだ方がいいかも…)
その時、屋敷の中から悲鳴が響いた。
「フィーナさん!?」
スリサズは慌ててカキの殻のドアノブに手をかけた。
鍵はかかっていなかった。
飛び込んだリビングで、フィーナ夫人が床にへたり込んで震えている。
夫人が指差す先にあるのは、巨大な巻き貝の内側の、緩くカーブした真っ白な壁…
模様替えをしようとしていたのだろうか…
壁かけの鏡が、揺らめく海水の中をゆっくりと倒れていく。
スリサズは鏡に泳ぎ寄って、鏡が倒れ切る前に支え…
そして…
鏡面に映るモノを見た。
フィーナ夫人が再び叫んだ。
「どうしてこんな、ありもしないものが映るの!?
居もしない魚が映るだけでは足りないの!?
この町の鏡は全て呪われている!!
それでもこれは酷すぎるわ!!
ああ、あなた!! あなた…!!」
スリサズは歯噛みした。
「やられたわ。
まさかあたしも術にかかっていたとはね…」
それは確かに立派ではあるが、同じ種類の貝が成長できる範囲内なので、人間の権力者の屋敷のように貧富の差を露骨に見せつけることはせず…
けれど厳かな力強さをたたえていた。
その玄関のドアの前で、スリサズはサザエの殻の呼び鈴に伸ばしかけた手を止めた。
(奥さんに何て言ったら入れてもらえるかな?
こっそり忍び込んだ方がいいかも…)
その時、屋敷の中から悲鳴が響いた。
「フィーナさん!?」
スリサズは慌ててカキの殻のドアノブに手をかけた。
鍵はかかっていなかった。
飛び込んだリビングで、フィーナ夫人が床にへたり込んで震えている。
夫人が指差す先にあるのは、巨大な巻き貝の内側の、緩くカーブした真っ白な壁…
模様替えをしようとしていたのだろうか…
壁かけの鏡が、揺らめく海水の中をゆっくりと倒れていく。
スリサズは鏡に泳ぎ寄って、鏡が倒れ切る前に支え…
そして…
鏡面に映るモノを見た。
フィーナ夫人が再び叫んだ。
「どうしてこんな、ありもしないものが映るの!?
居もしない魚が映るだけでは足りないの!?
この町の鏡は全て呪われている!!
それでもこれは酷すぎるわ!!
ああ、あなた!! あなた…!!」
スリサズは歯噛みした。
「やられたわ。
まさかあたしも術にかかっていたとはね…」