恋におちて
「おいおいまじかよ……お前大丈夫か?」
翔ちゃんはさっきまでの小馬鹿にした表情を一転して、心配そうにわたしの顔を覗き込んできた。
「いや、だから大丈夫じゃないからこうやってお願いしに来てるんだけど」
「そうじゃなくてさ……悪い、また後で」
他のお客さんに呼ばれた翔ちゃんは仕事の顔に戻し応対を始めた。
わたしはロックで注文していたウイスキーの氷をくるくる回すようにグラスを傾けながらそれを静かに見つめていた。