恋におちて

婚約してすぐくらいに、一馬の浮気は発覚した。

さっきまで泣く演技をしていた目の前にいる女、中沢絵里花(なかざわ えりか)はわたしと同じ企業に勤める契約社員である。

一馬とは同期で同い年。

わたしたちは入社前の内定式で意気投合し、付き合い出すまでそう時間はかからなかった。

一馬は営業部、わたしは人事部。

部署が違うこともあり、わたしたちの関係を知っているのはごくわずかな人だけであった。

だからなのか、一馬と中沢絵里花の2人が付き合い出したらしいという噂がわたしの耳にも入ってきた。

一馬が女性の目を惹く容姿をしていることもあり、噂が立ったのだろう。

わたしとのことはほとんど知られていないのに、なぜ中沢絵里花とはそんなに早く噂が広まったのか。

それは、彼女もまた一馬同様、男性の視線を集める容姿をしているからだ。

中沢が契約社員として入社した際、可愛い子が入ったと注目を浴びていた。



< 4 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop