恋におちて
「分かった。婚約解消してあげる」
わたしは彼が待っている言葉を告げ、薬指から指輪をはずすとテーブルにそっと置いた。
「わたしの両親にはわたしから伝えておく。それから式場のキャンセルもこっちでしておくわ。いろいろ大変だろうから」
キャンセル料っていくらくらいだったかな。
まさかこんなことになるとは思ってもみなかったからきちんと確認してなかったよ。
招待状を発送する前だったのは不幸中の幸いだ。
仕事しにくくなることこの上なかっただろう。
「式場はキャンセルしない。そのまま進める。ドレスは選び直すことになるけど。彼女もそれでいいって言ってるから。それと、今度の日曜に彼女がマンションに入るから春陽は土曜までに出て行ってくれよ」
空いた口が塞がらないとはこのことか。