姐御な私と無口なアイツ。
咄嗟に反対の足を出して、なんとか踏みとどまろうとした、その時──。
「──っと」
なんとかバランスは持ち直しかけていたので勢いは消えていたものの、ぼすっと、背中から何かにぶつかった。
「ごっ、ごめんなさ──……あっ」
すぐさま後ろを振り返り、謝ろうとするけれど、しかしぶつかった相手の姿を見てやめる。
だって、そこにいたのは。
「……なんだ、涼介か」
学ランに身を包み、見下ろしてくるその人は、私のよく知る川崎涼介。
こいつは俗に言う幼なじみで……じゃなくて!
涼介なんて紹介している暇がないほどの遅刻の危機が逼迫していることを思い出して、私はとりあえず走り始めた。