姐御な私と無口なアイツ。
「……ありがとう」
保健室、連れてってくれたりとか、他の意味もこめて、くすぐったいけどそう言った。
その拍子に、小石に躓きそうになる。
「わっ……」
「……」
無言で手を掴まれ、なんとか転ばずにすんだけど。
「転びすぎ」
涼介の冷たい視線が痛い。
てっきりそのまま手を離されるかと思ったのだけど、涼介は当たり前の様に手を掴んだまま歩き続ける。
「……」
その横顔を見て、跳ねる心はきっと気のせいじゃない。
「……好きだよ」
ぼそっと、聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた。
涼介が驚いた目を寄越してきたから、きっと聞こえていたのだろうけど。
涼介からの返事のように、ぎゅっと手を握られて。
私も同じように、ぎゅっと握り返した。
寒いはずなのに、寒くない。そんな、帰り道。