姐御な私と無口なアイツ。
電車が行っちゃう……!
後ろから涼介が同じように走って着いてくるのを気配で確認しつつ、全速力で走り続ける。
息がきれてきた頃、ようやく駅について、改札をくぐり抜けて、そして──。
パァァン……
エスカレーターを駆け上って、いざホームにたどりついたその瞬間、無情な音をたてて、電車が出発していった。
赤いラインの入った車体が、線路の向こうに遠くなっていく。
……乗り過ごした……。
目の前で電車に出発された私は、情けなく膝に手をつき肩を上下させて息を整える。
「……遅刻だな……」
いつの間にか私の隣に立った涼介が、冷静に言った。
次の電車は、10分後。
……確実に、HRには間に合わない。