姐御な私と無口なアイツ。
「……りょ……」
なんて、小さく寝言を吐きながら俺の左肩に寄りかかり、すやすやと眠りについているのは、紛うことなき俺の幼なじみ兼彼女の麻奈で。
……待ってくれ、何がどうしてこうなってるんだ?
いや、麻奈がこの部屋にいることは別段おかしなことではない。最近は特に、毎日と言って良いほどに、毎日この部屋でおやつを食べ散らかして時間をつぶすのが麻奈の日課みたいになってるし。でも。
……この状況は、一体なんですか……?
「……りょうすけ……」
……俺の名前?
名前を呼ばれたことに引き寄せられるようにもう一番麻奈の顔を見ると、それはもう気持ち良さそうにしていて……そんな顔で、俺の名前を寝言で呼ぶなんて。
(やばい……)
思わず視線を逸らして、二、三度息を整える。多分今絶対、普段の麻奈なら「何変な顔してんの涼介気持ち悪い」と一刀両断されるに違いない様な顔をしてる。
と同時に、さっきから感じるふわふわした感覚の正体に気がついた。俺はまだ夢を見ているに違いない。
俺の夢を見ている麻奈の夢を見る……なんだかややこしいし、若干自分が気持ち悪い。麻奈に言ったら罵倒されそうだから言わないでおこうか。