姐御な私と無口なアイツ。



やばい。まずい。かなり、やらかした。



いやどうせ夢だからどうってことはないのだけれど、でもやっぱり、長年の経験から、麻奈に悪戯がばれると狼狽えてしまう。



焦る俺の目の前で、麻奈は徐々に状況を把握していくようで、段々驚いたような表情が浮かんでくる。



こんな時ばっかり、自分の無表情さに感謝する。内心の狼狽ぶりは、きっと全く外には表れていない。



と、次の瞬間……。



「…………!!」



ドンッ!



いきなり、目を真ん丸にした麻奈に力一杯押され、そんな動きを予想していなかった俺は無様に倒れ込んでしまう。



……痛い。久々に喰らった。麻奈の攻撃。






……ん、痛い……?





体を支えるためについた肘が訴えてくる妙な現実感をもった痛みに、ふと感じる違和感。



……これって、夢のはずじゃ?



慌てて起き上がってみると、そこには麻奈が、口を金魚のようにぱかぱかさせながら、声にならない驚きをこちらに訴えかけてくる。



その姿を見た瞬間、何故か唐突に理解した。



俺は起きている。
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