姐御な私と無口なアイツ。




……やらかした。



今度こそ内心全力で焦りながら、それでも多分無表情のまま、俺は麻奈を見つめる。



麻奈の、衝撃と戸惑いがまっすぐに伝わってくる、どこか襲われたというような表情を見ていると、少しだけ傷ついた気分になる。



……やっぱり、嫌だったのだろうか。



これでも一応彼氏っていうことになっているんだけどな、と凹みながら(しかし恐らくこれも表情には出ていないんだろうが)、俺は口を開いた。



「……嫌だったか?」



そう言うと、麻奈はちょっとぎょっとしたようにこちらを見た。



「……え?」



まだ呆然としているようで、そんな顔を見ていると謝った方が良いのではと思うけど、謝るのはさっきの行動を否定してしまうようで何となくいやで。



「……嫌だったのか?」




もう一度、繰り返す。



頼む、答えてくれ。



嫌だったのなら謝るから、だから……。



祈るような気持ちでもうそう言うと、しかし突然麻奈の表情が一変する。



ばっ!と、効果音が付きそうな勢いで急に俺に背を向けてしまう。これでは表情が見えないのだが。



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